PAOSでは、価値観が多軸化・多様化した成熟社会において、現代企業がデザインを活用し、受け手の美意識を刺激触発することで感動的経営環境を創造する「核・拡デザイン戦略」が必要と考え続けてきました。
核・拡デザイン戦略とは、単なるVI(ビジュアル・アイデンティティ)やブランド戦略を表層的に行うことではなく、「1.政策・方針のデザイン」「2.表現・表象のデザイン」「3.新事業・事業領域のデザイン」「4.理念・企業存立のデザイン」「5.公共的・社会的価値のデザイン」「6.文化的・環境的価値のデザイン」という、6つのデザイン戦略のバランスのとれた実現を指しています。
「デザインはあらゆる分野の共通公分母でなければならない」とは、バウハウスの創設者W.Gropiusの言葉です。デザインを支える基本哲学は、「審美性」「快適性」「安全性」「個性」の確立であり、それらは全ての人工物の存在意義や存在価値を高めるものです。また、イタリアを代表する著名なデザイナーE.Sottosassは、「デザインとは人に花を贈るようなものである」と述べています。花を贈る時には必ず相手の気持ちを考えて選ぶように、デザインは常に受け手発想で、サービス業やホスピタリティ業精神に徹して行うことが大切です。
情報化社会・成熟化社会の進捗の渦中に在る現代企業にとって、工業化社会型に上から下へものを流してく発想はもはや時代遅れであり、受け手発想を持ち顧客の視点や価値観に立つことが、デザインの可能性や有用性の糧となっていきます。
PAOSが40年来主張してきた「核・拡デザイン」発想と戦略は、企業レベルのマーケティング・マネジメント上無視できない経営課題として、時代と共にますます重要性を増してきています。
ここで留意しておかなければならないのは、デザインと言えば短絡的に色・形の世界と捉えてしまいがちなことです。もちろん優れた表現というテーマは最終段階では非常に大切なのですが、表現が最適解として活かされていくために欠かせないのは、その目標となる戦略の策定です。つまり「見えるデザイン」に的確な方向性とパワーを与える「見えないデザイン」こそが重要であり、この6つの戦略軸はまさにそのことを示しています。